■目次
エグジットは「利食いと損切り」の2通り
スイングトレードの場合、株のように長期間保有して会社の成長につれて株価が上がるのを待つといったスタンスではなく、長くても1〜2週間ぐらいの相場の波動から差益をとることになります。したがって、買いか売りかでエントリーしたならば、必ずどこかで反対売買をしてエグジットします。
エグジットには、利食いとなる場合と、損切りとなる場合があり、その基本的な考え方は図表1のとおりです。
以下では利食いと損切りのそれぞれについて、具体的な考え方と方法を解説していきます。
ちなみに、ポジションを持っていても、持ち値近辺で相場がうじうじしていたり、2〜3日同じポジションを持っていても損切りもつかないけれど利食いも遠い、といったりしたことがあります。こういうときは精神的に追い込まれて迷いが生じるものです。したがって、いったん逃げて冷静さを取り戻してから仕切り直すのも手です。また、「何か変」と思ったときも第六感が正しいことが多いので、これも逃げたほうが正解です。
図表1 利食い、損切りの対応法一覧
「トレンドの転換点」と「チャートの節目」がポイント
利食いの考え方の基本は、さきほどの図表1にもあるとおり、中長期の方向に順張りのときには欲張ってみてもよく、アヤ狙いのときには素早く行ないます。また、経済指標などで相場が動く際には、予想どおりの動きで利が乗ったときには他の人たちも同じポジションを持っていると考えて素早く行ない、予想外の動きで利が乗ったときには欲張ってもよいと覚えておくとよいでしょう。
具体的な方法としては、買いの場合も売りの場合も、トレンドに乗るようにエントリーしているわけですから、そのトレンドに乗り続けている限り、同方向のポジションは持ち続けます。
そして、買いの場合にサポートラインを日足の実体が切ってきたり、売りの場合に日足の実体がレジスタンスラインを越えてきたりするなど、トレンドが変わったことが明確になったらポジションを閉じます。
トレンドが変わるポイントというのは相場の動きにつれて変化していきます。
上昇トレンドであればサポートラインが切り上がるにつれて変化するポイントも上昇していきますし、下降トレンドであればレジスタンスラインが下がるにつれて下降していきます。したがって、損切りの逆指値を置くポイントもこれに応じて変化しますから、「トレンドが変わるポイント」でエグジットした結果、当初は損切りで終わるものが、どこかの段階で利食いポイントに変わることになります。
トレンド判断がきちんと行なわれていれば、通常は利食いで終えることができます。
次に、トレンドに乗り続けている場合でも、いったん利食いを行なうケースがあります。
それは、節目に達したときと、経験上「行き過ぎ」の領域に達したときです。
節目というのは過去に揉み合った水準やマド、あるいは週足でみた強い抵抗ポイント(中期的なポイント)です。行き過ぎというのは、たとえばドル/円相場において1日で200ポイントがとれてしまったような場合です。こうした場合には、トレンドが転換していなくとも、いったん利食いをすることがあります。なぜなら、短時間のうちに大きく動いた相場は、ほとんどの場合、後に戻すことが多いからです。
このように、調整が入る確率が高い場合には、いったんポジションを閉じて様子をみて、再びエントリーのタイミングを図ったほうが効率よく収益を上げることができます。ただし、31カ月移動平均線を上抜け、あるいは下抜けた場合は、長期的なトレンド転換の可能性が生じますから、順張り方向のポジションは200ポイントリバースでもしない限りは保持します。
「自分の目標金額」には意味がない
ところで、利食いにおいて多くの人がやってしまいがちな間違いに「目標額を金額ベースで考えてしまう」というものがあります。たとえば、「今回のトレードで30万円を稼ぎたい。いまの為替レートは1ドル=80円だから、20万ドルを買って、1ドル=81円50銭になったら目標達成」といったものです。
このように金額で目標額を考えると、どうしてもその為替レートに執着してしまいます。その結果、自分がとっているポジションがトレンドに乗れているかどうかにかかわらず、利食いや損切りができないという状況に陥ってしまいます。
相場というのは、投資家の都合で動いているわけではありませんから、このような態度は不遜です。したがって、自分の都合には関係なく、純粋にチャートを判断基準にして、「トレンドはどうなっているのか」「どこに節目があるのか」ということだけを考えるようにしましょう。
チャートでみる利食いの例
まずは、トレンドの方向性に沿った順張りトレードの利食いの例です。
取り上げたポンド/円相場は、2012年11月足で31 カ月移動平均線を上抜けてきています
(図表2)。図表3では買いから入ったトレード、すなわち長期トレンドの方向性とトレードの方向性が同一の場合ですから、利食いの基本戦略はプロフィットセーブのための逆指値「200ポイントリバース」です。これが結果として利食いになる場合と、残念ながら損切りになる場合があると考えてください。
①11月13日は安値125.68(125.50)
②①から200ポイントリバースしたのが11月15日。
③翌11月16日寄り付き128.81で買い参入。逆指値は126.50割れに設定。
④1月2日まで200ポイントリバースなく上昇。この時点での逆指値は140.50割れ。
⑤翌1月3日に逆指値が付いて約13.60銭の利益確定となる。
⑥トレンドが強気であることと、ポンド/円は値幅の振幅がやや大きいので売り転換せず様子見。
図表2 「どこでトレードしているのか」長期トレンドを確認する(ポンド/円 月足チャート)
図表3 プロはいつどういう理由で利食いするのか?
書籍名:FXプロの定石
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